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相続

ここでは、遺産分割協議の進め方、相続放棄・限定承認、寄与分、特別受益、その他相続に際して注意すべき点をご説明します。

相続

概ねの以下の流れになります。

(1)相続人の確定

故人の相続人の範囲をはっきりさせる必要があります。時として、相続人同士でも面識のない場合がありますので、まずは故人の戸籍調査等により、相続人を確認します。相続人のうち一人でも欠ける相続協議は、無効です。事後の紛争を防止するために、協議を始める前に話し合いに加わるべき人を確定させることが重要です。

(2)相続財産の確定

分割協議の対象とする財産を確定させます。協議の前に、故人の資産及び負債の状況を調査します。分割協議が成立後に発見された財産について、再度、分割方法を協議することは可能ですが、できうる限り一度の協議で決めたほうがスムーズです。

相続対象となる財産には、資産に限らず、負債も含まれます。故人の所有していた物(動産、不動産を問いません。)、金銭債権(貸金、預金等)、借地権・借家権(ただし、公営住宅の入居者の相続人は、当然には住宅を使用する権利を承継しないというのが最高裁の立場です。)、会員権(特約によります。)等、種々のものがあります。故人の金銭債務(借り入れたお金の返済義務、売買代金の支払義務、保証債務等)のほか、故人が物を売る約束をしていた場合には、買い主に物を引渡す等、なんらかの行為を必要とする義務も承継します。

他方で、故人に専属すると解釈されるもの(一身専属権)は、相続されません。例えば、扶養を請求する権利は、本人が生きている間しか存在しない権利なので相続の対象になりません。

なお、相続の対象となるのは、不動産、預金、家財道具といったプラスの財産だけではありませんので、ご注意ください。故人の借金や、保証債務等のマイナスの財産も相続の対象です。故人名義の債務が大きい場合には、後で説明するように、裁判所に対して相続放棄や限定承認等(両方とも、原則として、相続人が相続に気づいた時点から3か月以内)の法的対処を検討したほうがよいケースもあります。

(3)協議

相続人間で、分割の方法を協議します。協議がまとまりましたら、分割の内容を記載した協議書を作成します。遺産分割協議書の作成は故人の所有していた不動産の所有権移転登記をするうえでも必要です。

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停の場で協議する方法もあります。調停がまとまれば、調停調書が作成されます。まとまらない場合は審判に移行する(裁判所の判断を求める)か、不調ということで調停が終了または申立が取り下げられることになります。

(4)協議後の手続き

遺産分割協議書が作成できたら、被相続人の名義になっている各種財産のうち、名義の必要なものの名義を変更します。

不動産については、相続を登記原因とする所有権移転登記をします。各地の登記所で所有権移転登記の申請をします。登記申請の際に、疎明資料として遺産分割協議書を添付する必要があります。スムーズな移転登記のために、協議書の記載を明確にしておく必要があります。

銀行預金の名義変更を行います。近時、銀行は、遺産分割が確定するまでは一部の相続人が勝手に預金を引き出して他の相続人の権利を侵害することを防止するためとして、引き出しに応じないところがあります。

株式の名義変更には、取引している証券会社の取引口座の名義変更及び所有している株式名簿の名義変更が必要です。

2 相続放棄・限定承認について

(1)相続放棄

相続人には、相続するか否かを決める自由があります。故人の負債が資産を上回る場合など、相続することが相続人にとって不利な場合には、相続放棄を検討することになるでしょう。

相続人放棄をするか否かは、相続人各自が決定します。手続き(家庭裁判所への申述)も個別に行います。他の相続人が相続放棄したからといって、他の人が相続放棄したことにはなりません。また、相続放棄の期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」、つまり、被相続人が死亡したことを知り、かつ、そのために自分が相続人にとなったことを知った時を言うとされています。

なお、相続の放棄をした人は、その相続に関しては、初めから相続人ではなかったとみなされることにより、次順位の相続人が相続することになります。たとえば、通常、故人の孫は相続人でない場合が多いですが、故人の子が相続放棄をすることで、相続人になる場合があります。例えば、Aさんが亡くなって、Aさんの子のBさんが相続放棄をすると、Bさんの子のCさん(Aさんの孫)がAさんの相続人となります。そのため、Aさんの債務を引き継がないようにと考えてBさんが相続放棄をすると、BさんはAさんの債務を負わないことになりますが、Bさんの子のCさんが思いがけず、負債を引き継いでしまうことになりますので、ご留意ください。このような事態を避けるため、相続放棄をする際は、代わりに相続人になる人が出てこないか、出てくる場合には、その人も相続放棄をするかどうかを検討しなければなりません。

また、遺産を費消してしまった(例えば、故人名義の銀行預金を引き出して使ってしまった)相続人は、相続放棄や下記の限定承認ができなくなってしまうおそれがありますので、ご注意下さい。

(2)限定承認

相続によって得た財産の限度においてのみ、故人の債務及び遺贈を弁済するようにすることを限定承認といいます。相続財産が債務超過になっているか否かは実際に清算しなければ分からない場合に用いられることが多い制度です。

相続放棄と異なり、限定承認は相続人全員でのみ行うことができます(一部の相続人のみが限定承認する、という扱いはできません。)。

限定承認の期間は、相続放棄と同様、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。

3 寄与分

故人の財産の維持・形成に特別な貢献をした場合、共同相続人間の実質的公平を図るために、貢献した分(寄与分)だけ相続人の相続分を増やす制度です。故人の営んでいた事業への労務の提供(報酬で十分な対価を得ていた場合は除きます。)、財産上の給付をしたりした場合、療養看護をしていた場合(相続人が療養看護を行ったことで費用がかからず、故人の財産が減少しなかったと考えられる場合)等です。

被相続人の財産の維持または増加につき、「特別の」寄与があったといえなければならず、家族の共同生活上の協力扶助は「特別の寄与」には入りません。法律上、当然に一定の割合が決められていたり、算定表のようなものがあったりするわけではないため、共同相続人間の協議又は審判によって決定する必要があります。
共同相続人のうちに、被相続人の財産の維持または形成に寄与した人がいる場合に、相続財産からその人の寄与分を控除したものを相続財産と見なして相続分を算定します。

4 特別受益

共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、贈与を受けたりしている人がいれば、それを考慮せずに、残った財産を分割すれば、共同相続人間で不公平が生じます。遺贈、婚姻、養子縁組のための贈与があった場合、生計の資本としての贈与があった場合、営業資金の提供、住居用の家屋の新築費用、住居用の土地の提供等があった場合等は特別受益があったとして、相続において考慮されます。

特別受益を受けた相続人の相続分は、次の方法で算定されます。

(相続開始時の相続財産価額)+(故人の生前に贈与された額)=みなし相続財産
(みなし相続財産)× (相続分率) =本来の相続分
(本来の相続分) - (贈与または遺贈価額) =具体的相続分

遺贈または贈与の価額が当該相続人の相続分の価額以上である場合は、特別受益者は相続を受けることができません。

特別受益についても、法律上、当然に一定の割合が決められていたり、算定表のようなものがあったりするわけではないため、共同相続人間の協議又は審判によって決定する必要があります。

5 その他、相続で発生しうる問題等

(1)不在者財産管理人

相続人を調査したところ、相続人の中に、所在不明の人がいる場合がまれにあります(他の相続人がその存在すら知らなかった場合もあります。)。そうであっても、所在不明の相続人を除いて分割協議を進めることはできません。

そのような場合は、家庭裁判所の不在者財産管理人の選任を申し立て、選任された管理人(弁護士等が就任する場合が多いです。)に分割協議に加わってもらいます。

(2)特別縁故者

故人に相続人がいない場合、相続財産は、特別縁故者(例えば内縁の妻など、故人と生計を同じくしていた人、故人の療養看護に努めた人、その他故人と特別の縁故があった人)に分与されるか、国庫に帰属されます。特別縁故者は相続人でないので、自ら積極的に家庭裁判所に分与を申し立てないと、財産をもらいうけることができません。

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